日々雑感みぞぐち幸治のひとり言

教科書採択について

2011年7月20日 (水) 06:36

今年は中学校教科書採択の年です。

各地で8月末までに採択が行われる予定です。

先日の一般質問の議事録をUPします。

平成23年6月定例会 一般質問(教科書採択について)
 
【質問】
 教科書採択についてでございます。
 ことしの夏に行われます中学校教科書採択について質問をいたします。

 今回の教科書採択は、新しい教育基本法が制定されて初めての採択となります。
新しい教育基本法では「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」ことが教育の目標の一つとして示されました。
これら教育法規の改正に基づき、学習指導要領の改訂が行われ、教科書会社は教科書の編さんを行いました。

 しかしながら、ことし3月末に検定合格となった教科書を調査すると、新しい教育基本法、学習指導要領に沿っているのか、疑問に感じる教科書もあります。せっかく教育基本法が改正されたのに、政権交代後に教科書が出版されたためか、特定の思想やイデオロギーを持った方々が喜びそうな記述が多く、少々がっかりしております。

 一方、県教育委員会では、教育基本法や新学習指導要領はもとより、くまもと「夢への架け橋」教育プランの理念も踏まえ、新たに公共の精神や生命尊重の精神及び環境の保全に寄与する態度等の3つの観点を加えるなど見直しを行い、選定資料の作成に当たってこられました。

また「教科書の調査員数や調査日数をふやすなど、調査研究の一層の充実を図るとともに」「選定資料に客観点な数値等を盛り込むなど、よりわかりやすく一層の参考となるよう、資料の工夫、充実に努め」「市町村教育委員会等の主体的な採択に資するよう、県教育委員会としての役割を」果たしていくと、昨年11月定例県議会で私の質問に答えられています。

恐らく、前回よりも、市町村教育委員会の採択に、大いに参考になるような選定資料ができ上がっているはずだと思います。

 今後は、県内の採択地区で、県が策定した選定資料を参考にしながら、8月末までに教科書を選んでいく作業が行われます。

一般の国民には、今月の17日から検定に合格した教科書が見れるようになっております。

 きょうは、検定に合格した教科書を実際に見て感じたことあるいはさまざまな情報を収集し思ったことをまとめて、率直に質問させていただきたいと思います。

 教育長にお尋ねをいたします。
 第1に、自衛隊に対する記述です。

 これまでの公民教科書でも、自衛隊を否定的に扱う教科書がありました。
学習指導要領の日本国憲法の平和主義について理解を深め、我が国の安全と防衛及び国際貢献について考えさせ、戦争を防止し、世界平和を確立するための熱意と協力の態度を養うという観点から考えると、自衛隊を否定的に扱わず、憲法上の役割や平和支援活動について詳しく伝えることが重要であります。

 今回の震災に対する自衛隊や消防隊員の命をかけた支援活動には、世界じゅうが感動しています。国土防衛や災害派遣で活躍している自衛隊を、憲法違反と疑える集団と紹介をする教科書について疑問を感じます。

 例えば、現在熊本県の中学校で使用している教科書で一番多いのは東京書籍、続いて教育出版、帝国書院となっています。

今回検定を合格したそれぞれの記述を見ていると、東京書籍では、日本国憲法は戦力の不保持を定めていますが、日本は国を防衛するために自衛隊を持っています、自衛隊が憲法に違反していない理由として、政府は、主権国家には自衛権があり、憲法は自衛のための必要最小限の実力を持つことを禁止していないと説明しています――ここからがまた問題ですが、しかし、平和と安全を守るためであっても、武器を持たないというのが日本国憲法の立場ではなかったのかという意見もあります。

教育出版、自衛隊の存在をめぐっては、憲法とのかかわわりの中で、さまざまな意見が出されております、かつてのように、軍部が独走して戦争を引き起こさないよう、自衛隊の最高指揮権は文民である内閣総理大臣が持ちます。

帝国書院では、しかし、戦争放棄と戦力の不保持、交戦権の否認を定めた憲法第9条、そして平和憲法に反するものではないかという議論は、冷戦終結後も続いています。このような記述となっております。

 恐らく、これを見ると、子供たちは、憲法違反という疑いがあるのではないかというふうに読み取るものと思います。

 本県では、これまでも県内の災害活動等で自衛隊にはお世話になっておりますし、自衛隊の役割等を県内の子供たちにもわかりやすく教えることは当然のことであると思いますが、教育長はどのようにお考えでしょうか。

 第2に、拉致問題は国民的課題であります。許されない人権侵害、北朝鮮による国家的犯罪であります。

本県でも、毎年12月には、北朝鮮による拉致問題を取り上げた集会等も開催しているところであります。

 そうした日本国政府の方針どおりに記さず、北朝鮮による拉致問題が、北朝鮮との関係好転を阻害している問題でもあるかのような記述や数行しか扱わないものもあるようです。

拉致は許されない北朝鮮による国家的犯罪であること、きちんと犯罪性を教える教科書を選ぶべきだと考えますが、教育長はどのようにお考えでしょうか。

 第3に、外務省の公式見解と異なる領土見解を唱える教科書をどのように考えるのか。

 今月18日には、自民党県議団から10名が、尖閣諸島を守る石垣集会に参加してきました。改めて領土問題の重要性を感じてきたところですし、日本の領土を守る意識を教育の中で培うことが大切であるとの思いを強く持っています。

 検定に合格した教科書の記述を見てみると、東京書籍、北方領土、竹島、尖閣諸島という言葉は出てくるが、我が国固有の領土との記述はございません。

教育出版、竹島については、日本と韓国との間にその領有をめぐって主張に相違があり、未解決の問題となっています、また、東シナ海に位置する尖閣諸島については、中国もその領有を主張しています。
つまり、我が国固有の領土との記述はございません。

 特に、北方領土、竹島、尖閣諸島のことは、国民的課題として詳しく教える教科書でなければならないと考えますが、教育長はどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

 第4に、学習指導要領に、国旗、国歌の意義と相互に尊重することが国際的儀礼であることを理解させることを求めておりますが、数行でごまかしている教科書、きちんと教えない教科書もあるようです。

 例えば、東京書籍、主権国家は、国家を示すシンボルとして、国旗と国歌を持っています、日本では、1999年に法律で日章旗が国旗、君が代が国歌と定められました、国同士が尊重し合うために、互いに国旗、国歌を大切にしていかなければなりません。

国旗、国歌は、その国を示すシンボルです、国旗、国歌には、それに対して互いに敬意を示し、尊重し合うことが、今日では国際的な儀礼になっています。これは教育出版ですが、そのように書いてあります。

 国旗、国歌については、かけがえのない自分たちのものであり、日本を愛するから日本の繁栄、地域の発展があり、外国の立場もわかるようになると素直に子供たちに教えるべきだと思いますが、教育長はどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

 
 そのほかにも、歴史上の人物等を教えない教科書あるいは歴史上明確に疑われる事案を記載する教科書、そういうものがありますが、要は、私が言いたいのは、日本が嫌いになる教科書ではなくて、日本人としての自信を持てる教科書、健全な歴史や国民意識を教える教科書で子供たちには学んでほしいということであります。

 簡単に言うと、これまでの教科書は、歴史というのは支配する悪い人たちと支配される民衆との戦いの連続という観点から作成されてきました。

今回は、教育基本法が改正され、学習指導要領も改訂されました。特に、豊かな情操と道徳心、伝統と文化を尊重する、国と郷土を愛する態度を養うなどの文言が教育基本法に新たに加わりました。

 その観点から考えると、もっと日本が好きになる教科書が選ばれるはずだと考えますが、教育長の所見をお尋ねいたします。

 最後に、これから市町村で採択作業が始まりますが、県として今後どのように対応するのか、お尋ねいたします。
 
【山本隆生教育長答弁】
 今回採択される教科書は、改正教育基本法等の趣旨に基づいて編集されたものであり、いずれも国の検定基準に合格している教科書でございます。

 実際に合格している教科書を見ますと、同一の内容でも、その触れ方には軽重があり、学習指導要領に示された目標を実現するためには、教科書をいかに使うかといった指導方法の工夫改善が重要であると考えております。

 そこでまず、自衛隊については、政府見解と憲法上の解釈の問題、東日本大震災等における災害派遣や国連のもとでのPKO活動など、国民生活や国際社会に対する貢献について学習させることが大切であると考えております。

 次に、拉致問題については、くまもと「夢への架け橋」教育プランにおいて重大な人権問題として取り上げ、拉致問題を考える集会の開催や学習指導資料の活用を通して取り組んでいるところでございます。

したがって、我が国の主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な問題であることについて、きちんと触れるべきだと思っております。

 次に、領土問題については、北方領土や竹島は日本固有の領土であり、現在不法に占拠されていること、また、尖閣諸島については、そもそも解決しなければならない領有権の問題は存在しないことなど、日本政府の基本的な立場を踏まえるとともに、関係国の主張にも触れ、我が国の領土、領域について理解を深めさせることが大切であると考えております。

 最後に、国旗、国歌につきましては、学習指導要領に示された我が国の国旗と国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育てること、また、国歌・君が代をいずれの学年においても歌えるようにする小学校の学習の上に立って、中学校では、国旗、国歌の意義や国家間においてそれらを相互に尊重することが大切であることを指導していく必要があると考えております。

 いずれにいたしましても、県教育委員会といたしましては、各採択地区における公正確保の観点から、選定資料に、活用に当たっての留意事項等を新たに盛り込み、周知徹底を図ってきたところでございます。

 今後も、採択権者の権限と責任のもと、十分な調査研究を行い、それぞれの地域や子供たちに最も適した教科書が採択されるよう、指導、助言、または援助を行ってまいります。
 
【質問】
 教育長から一定の答弁をいただきました。

 事実として、さっき私が紹介したような教科書が、文部省の検定を通っているという事実があるんですね。

ですから、この中から選んでいくということになりますが、教育長から、自衛隊、それから拉致問題、領土、そして国旗、国歌についてそれぞれ御答弁をいただいたところでありますが、例えば自衛隊については、さっき言ったように、自衛隊の役割とかを教えずに、憲法の疑いがあるという表現がある一方、ほかの教科書では、日本国憲法第9条には、戦力の不保持がうたわれています、そのため、この憲法のもとで自衛のための武力が持てるのかという議論がなされてきました、政府は、ここで触れられている戦争とは、他国に侵攻する攻撃を指すものであり、自国を守る最低限の戦闘までも禁じているものではなく、自衛のための必要最小限の防衛力を持つことまで憲法は禁止していないと解釈し、自衛隊を憲法第9条に違反しないものと考えています、憲法の規定と自衛隊の実態との整合性については、今後なお議論が続いていきます。そういった表現もあるわけですね。

 別に、憲法改正という表現を強くしろと私は言っているんじゃなくて、憲法違反の疑いがあるとおっしゃれば、憲法改正の議論もあるというような、両論併記みたいなものが当然必要だというふうに思います。

 例えば、国旗、国歌でいくと、先ほどの紹介した話でいくと、自分の国を大事にしようという話じゃなくて、相手の国の国旗や国歌を大切にするために大事にしましょうという話なんですが、そうではなくて、主権国家の独立と尊厳を記し、国家の掲げる理想や国民が共有する誇りや連帯心を象徴するものとして国旗と国歌がありますというふうに、まず我が国のことをきちっと教えて、大切にするという心を養って、そして、なおかつ相手の国の国旗や国歌を尊重していく、そのことを教えるべきだというふうに思いますので、教育長からは――どの教科書がいいというお話はこの段階ではできませんが、ぜひ、県としては、できるだけの情報公開をしながら、それぞれの採択地区で子供たちが日本の歴史に愛情が持てるような教科書を選んでいただけるようにお願いをしておきたいと思います。

 そのためには、ぜひ、教育委員の皆様――県内全部ですが、教育委員の皆様方には、実際に手にとって読んでほしいというふうに思います。一般の国民の方には、今月17日から30日まで各地で展示会が行われておりますので、そこで見ることができます。それぞれの教科書を手にとって読んでみる、教育委員の方々、保護者の方々も、ぜひそういうことをやっていただきたいと思います。

 先ほど言った検定に合格した教科書でも、ストライクゾーンで言えば、ホームベースのぎりぎりの左端を通っていくようなものから、さまざまなんですね。

この左端を選んではいけないということではないんですが、別に好んでこの左端を選ぶものではないというふうに思っていますので、ぜひ読んで、きちんと読んで、皆さん方も教育委員会に声を届けていただきたいというように思います。

 教科書がかわれば日本が変わる、日本が好きになる教科書が採択されることを心から期待いたしまして、次の質問に移ります。(おわり)