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9月定例会が終わった。
前にも書いた通り、本日、意見書の提案説明を行った。
マスコミから原稿がほしいとの依頼があったので、マスコミだけに渡して、私が述べた真意が伝わらない可能性があると判断したので、全文を掲載しておくことにする。
長いので、興味のある方だけ見ていただければと考えている。
自由民主党の溝口でございます。
議員提出議案第1号「球磨川を守るべき宝」と位置づけ、最大限の環境的配慮と住民の安全が両立する球磨川流域の治水対策を求める意見書の提出について提案理由説明を行います。
蒲島知事は、9月11日に本会議で「現行の川辺川ダム計画を白紙撤回し、ダムによらない治水対策を追求すべきであると判断した」と表明されました。
その説明の中で述べられた論点について、我が党の見解を述べながら提案の理由を説明させて頂きます。
まず、球磨川の環境を重視し、地域のブランドを高めるという観点から「球磨川を守るべき宝」として位置づけることについては、ダム問題の賛否に関わらず、これまでも流域住民が常々、持ち続けてきた気持ちであり、我々も全くの同感であります。
しかしながら、残念なことに、知事の発言のどこを探しても「ダムによる治水対策」に替わる具体的な代替案はなく、県の責務である流域住民の生命・身体・財産を守るという覚悟を全く感じることができませんでした。
長年、この問題に翻弄されてきた地域住民の多くは、もしもダムによる治水対策を知事が否定する場合は、県が責任を持って代替案を示してもらえる。
そのことをもって、はじめて、地域住民の要望である球磨川流域の治水対策が実現するはずで、この川辺川ダム建設事業に対する論争が終結すると考えていました。
結果的には、残念なことに、知事が明確な代替案を示さなかったために、この問題が終わるどころか、また、はじまったとの印象を持っています。
それに加え、知事が述べられた「洪水を治める」という旧来の発想から脱却し、「洪水と共生する」という新たな考え方に立脚すべきという考え方は、流域の責任ある立場の首長や議員並びに流域住民も戸惑っている状況です。
これは、想定しうる雨量に対して確立した治水対策案である「ダム案」に対し、「ダムによらない案」では洪水を防げないかもしれないという前提に立つもので、しかもその対象が生命・身体・財産に係わるものである以上、その価値観が、首長の考えや民意で強要されるべきではなく、当事者(住民や地上権を有する者)の多様な価値観が優先されるべき絶対的権利であります。
言い換えれば、流域住民全員が治水安全度を下げることに同意すれば別ですが、一人でも反対する人がいれば成り立つものではないということです。
いずれにしても、「洪水と共生する」「治水安全度を下げる」という確認は第一義的に、流域市町村が責任を持って議論し判断しなければならない問題だと考えています。
次に、財政的負担に対してですが、「ダムによらない案」のほうが少なくなるという根拠が示されていません。
県民の中には、ダムを作らないという判断は、県の財政負担が全くないと思っている方も多いようです。
今回、私が怖いと思ったのは、熊日新聞の世論調査の結果が出た後の県民の反応を見ていると、これでダム問題は解決した。と錯覚している方々が多いのではないかという点です。
知事が表明した後も球磨川流域の治水対策は全く解決していない訳で、洪水から流域住民の生命・身体・財産を守るという目的はなんら解決していません。
ダムによらない治水対策はいったいいくらかかるのか?
県の負担はどうなるのか?
現時点ではダムによる治水と比べることもできず、判断する材料がありません。
次に、五木村への対応であります。
知事は、五木村に対して心情的な部分では涙ながらにその心情を語られましたが、五木村が納得するような具体性は全くありませんでした。
知事は「川辺川ダム事業を振り返ると、そこには常に苦難と対立の歴史がありました。」と述べられておりますが、知事は大事なことを忘れておられます。
五木村にとってこの川辺川ダム建設問題は、苦難と対立の歴史に加え、国や県との約束の歴史があります。
五木村はダムができることを前提とした村づくりを望んでいたはずですから、「ダムによらない案」を主張する以上、県単独でもその責任を果たす覚悟が必要なはずです。
また五木村にとっては知事のダム湖予定地を不確定な未来のために確保しておくという発言は、到底受け入れられるものではありません。
次に、新たな手法として環境に配慮した穴あきダムについて知事は「穴あきダムは突然に示されたものであり、ダムによらない治水案を追求した結果示されたかどうかは疑問。
また、穴あきダムの環境への影響や技術的な課題について詳細な説明がない状態では、その是非について判断できないと考えている」と述べられました。
この「穴あきダム」は球磨川水系河川整備基本方針の議論の中で検討が始まったもので、これから具体的な検証がなされるものであり、今の時点で否定するのは早計すぎるのではないかと考えています。
次に、知事は、国交省が「ダムによらない案」を極限まで検討していないという認識を示されております。
これは、これまでの球磨川水系河川整備基本方針の議論の詳細をもっと調べる必要があります。
これまでの議論の中で、河床掘削や堤防の嵩上げ、遊水地等については住民討論集会でも、また球磨川水系河川整備基本方針の議論の中でも具体的な議論がなされております。
もちろん、県土木部も十分理解しているはずであります。
そのことからも、知事が言われる「極限まで追求」という表現は誠に抽象的で、さらに時間が経過することが予想され、問題の先送りにしかならないと考えております。
このままでは、川辺川ダム問題が解決するどころか、ますます混迷を深め、結果的に問題の先送りにしかならず、しかも、最大の犠牲を強いられている五木村に対してもこれまでの約束を反故にしかねない状況に陥る恐れがあります。
そのような中、最大の受益地である人吉市議会から国、県に対して9月22日に意見書が提出されております。
その内容は、国、県に球磨川流域の生命と財産を守るという最大の政治責任を明確にしつつ、地域として守るべき宝である球磨川水系の環境維持にも最大限配慮した河川整備基本方針に基づく治水対策を早急に策定されるように強く求めるものです。
もちろん、ダムによる治水対策も視野に入れてという内容です。
そこで、我々県議会としては、この事態を打開するために、知事の「ダムによらない治水対策を追求する」という結論に対しては、県議会として「予断をもたず最大限の環境的配慮と、最大限の住民の安全が両立する、より経済的な球磨川流域の治水対策を追求する」に変更すべきであると考えます。
よって、県議会として、国に対して、予断を持たず「球磨川を守るべき宝」と位置づけ、最大限の環境的配慮と住民の安全が両立する、より経済的な球磨川流域の治水対策を改めて、速やかに提示されるよう強く要望する意見書と合わせて、五木村の振興についての意見書を提出すべきと判断をいたしました。
以上が、議員提出議案第1号「球磨川を守るべき宝」と位置づけ、最大限の環境的配慮と住民の安全が両立する球磨川流域の治水対策を求める意見書を提案する理由であります。
どうか、議員各位におかれましては、何卒、この趣旨にご賛同賜りますようお願い申し上げまして、私の提案理由説明を終わります。